『BOPを変革する情報通信技術−バングラデシュの挑戦』
 グラミン銀行総裁 ムハマド・ユヌス 序文
 アシル・アハメッド/大杉卓三 編著  (集広舎 発行)  2009.9  A5判並製/173頁  定価 1,890円(税込)
 電気が通じていない農村で携帯電話を使う村人、電話線が整備さ
 れていない町で運営されるインターネットカフェ。開発途上国に
 おいて、情報通信技術(ICT)が農村部でも人々の身近に存在する
 風景は、ありふれたものになろうとしている。
 本書の舞台であるバングラデシュをはじめとする開発途上国では
 BOP(Base of the Pyramid:所得ピラミッドの底辺層)と呼ばれる
 貧困層が人口の多くの割合を占める。世界で40億人以上といわれ
 るBOPを巨大なマーケットとして再定義し、持続的なビジネスを
 通して貧困削減に取り組む戦略が注目を集めている。BOPマーケッ
 トでは、社会的利益を最優先させ、BOPの人々が自ら取り組む「ソ
 ーシャル・ビジネス」が重要であり、そこにICTは不可欠なツール
 となっている。ICTを活用することで人々は適切な情報を入手し、
 またコミュニケーションは人々の連帯を実現する。その結果、自
 らの能力に自信を持ち、単なる巨大マーケットの消費者ではなく
 新たな富を創造する生産者ともなりうる。
 本書は九州大学とグラミン・コミュニケーションズの共同研究の
 成果に基づき、バングラデシュにおいてICTが導く社会経済の変革
 について具体的事例を綴ることで、そこに暮らすBOPの人々の姿を
 明らかにする。