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書名 : 紫の花伝書―花だいこんを伝えた人々
編著者 : 細川呉港
出版社 : 集広舎
定価 : 2,200 円
出版年 : 2012/05 月

 細川呉港 著 四六判上製 369頁 定価 2,310円(税込)
戦後、日本中に広まった花だいこんの来た道を追って、いま
初めてあきらかにされる五つのルートと五つの人生。
揚子江沿岸、上海、北京そして満洲から。彼らが生きた時代
は、まさに戦争の時代だった。
半藤一利推薦!

      目  次

まえがき 四十六年前の新聞の投書欄から
             この探索は始まります。
第1章 初めての出会いと新聞の「花だいこん談義」
第2章 主婦山口文子の投書から全国に広がった波紋
第3章 陸軍薬剤少将、山口誠太郎の生涯
第4章 上海ルートの登場
     横浜山手の高台から見た爆撃
第5章 北京ルートの登場
     日本に亡命した張燕卿
第6章 華僑と結婚した日本女性
     陳栄千代の生涯
     牧野植物同好会
     牧野先生の思い出
第7章 満洲ルートと明治・大正・昭和の園芸家たち
     伝説的園芸家 桜井元/廉親子
     ムラサキハナナの名づけ親―加藤光治
     満鉄総裁、貴族院議員―林博太郎
     『萬花譜』の画家、辻永
第8章 その後の花だいこんと「平和運動」
第9章 花田歌の生涯
     歯科医 園江稔老人
     女子大から小説家デビュー
     満洲医科大学より龍山開拓女塾へ
     逃避行
     岡西為人と大谷光瑞
     三泉寮の奇跡・女子大松柏寮の縁
     女ひとり戦後を生きる

資料編1 満洲医大の庭にあった諸葛菜
資料編2 ちょっと花の学名について
資料編3 諸葛菜は諸葛孔明の兵糧か?
      橋本関雪『支那山水随縁』
      中国の農業書の元本になった『嘉話録』
      松枝茂夫の郝懿行賛美
      澤村幸夫『支那草木蟲魚記』 


種子に託した平和の心

 春から初夏にかけて薄紫の花の蘇生が日本各地に見られる。花だいこん、またの名を諸葛菜(ショカツサイ)という。戦後、日本に広まったこの野生の花は、大陸に生育する帰化植物だ。
 菜の花を紫に染めたようなかれんで清楚な花の種子は、誰が日本に運んだのか。46年前の新聞の投書欄から著者の探索の旅は始まる。
 「我が家の春を楽しませた花大根」。投書欄に載ったこの小さな記事をきっかけに、花の名前や、伝搬のいわれをめぐって、さまざまな議論が紙上で展開され、植物学者でもあった昭和天皇の当初まで登場して「花だいこん談義」は沸騰する。
 著者は寄せられた投書を頼りに、長い歳月をかけて花だいこんの来た道を追って取材を続ける。次第に明らかになっていう中国大陸からの五つのルートと五つの人生─。
 長江(揚子江)沿岸から種子を選んだのは陸軍薬剤少将だった。その種子は彼の意志を継いだ息子とその妻によって、全国に広がっていった。
 奉天(現瀋陽)から持ち帰ったのは満洲開拓女塾の女性教師だった。壮絶な逃避行の捨て、日本に引き揚げ、母校の女子寮の周辺に種子をまいた。作家としても生きた彼女は、野の花のような流浪の人生を一人、誠実に生き抜いた。
 上海、大連、北京─・著者は種子を持ち帰った人々の人生を丹念に追う。そこに立ち現われてくるのは、戦争の時代、大陸で生き、修羅を見た人々が、焼け野原になった日本を、菜の花でいっぱいにしようと願った一人ひとりの懸命な姿だった。花を愛する人々が、困難な生活の中で、花に青春の思いを、平和への願いを託し、人から人へと広まっていく。
 「花は人間の心と人生を託して、運ばれていく」。花を伝える人々の命への柔らかなまなざしが、丹念な筆致でつづられる。戦後67年、日中国交正常化40周年の今年、知られざるもう一つの日中関係史が明かされる。前作「草原のラーゲリ」に続く感動の一冊。
(本岡典子・ノンフィクション作家)
 中国新聞 2012年(平成24年)6月17日(日曜日) 読書欄 書評






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